通関業務とは-通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

貨物を輸出入するには、税関を通過する必要があります。通関業務は、税関官署との手続きを代行する通関業者が担当し、輸出入が可能となります。通関には、膨大な書類を提出する必要があり、通関業者は関税の計算や申告書の作成を行います。しかしながら、紙媒体であるため、作業効率には大きな差があり、経験やノウハウによっても異なります。最近ではAIを活用したデータ処理によって、通関業務の効率化が進んでおり、属人化からの脱却が図られています。

本記事では、通関業者や類似した事業者、通関業務の流れや種類について解説します。

通関業務とは

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関業務は、通関業者が輸出入業者の代わりに税関官署に対して行う手続きをいいます。通関業者は、業者に代わって税関官署に直接関わる手続きを行います。一般的に、輸出入業者は通関業務を直接行わず、代わりに通関業者に依頼します

通関業者は、通常どのような業務を実施しているのでしょうか。また、フォワ―ダーや乙仲といった類似の業者も存在しますので、通関業者との違いについて紹介します。

通関業者の業務とは?

通関業者は、輸出入に関する税関関連の代理手続きを行う業者をいいます。通関業者は「通関業法」という法律の規定に従って税関に関する業務を行い、財務大臣の許可を得る必要があります。

通関業者の業務内容として、以下のようなものがあります、

  • 書類チェックおよび税関への申告
  • 貨物引き取り
  • 税関検査の立ち合い
  • 関税および消費税の立替納付
  • 国内配送の手配
  • 船の手配(国際物流)
  • その他、他機関への申請

通関業者とフォーワーダー、乙仲との違いは?

通関業者と事業内容が似た事業者として、フォーワーダーや乙仲(おつなか)が存在します。通関業者との違いについて紹介しましょう。

フォーワーダーとは

フォーワーダー(Forwarder)とは、「貨物利用運送事業法」に基づいた業務を担っている事業者であり、国土交通大臣の認可を受けています。フォーワーダー自体は運送貨物手段を所有していませんが、荷主の依頼に応じて貨物を預かり、船舶や航空機など、実際に運送を担当する業者を手配する役割を果たしています。

乙仲とは

乙仲(おつなか)とは、国土交通大臣の許可を受けた海運貨物取扱業者(海貨業者)であり、フォーワーダーと同様に荷主から貨物を預かります。ただし、乙仲は「港湾運送事業法」に従い、港湾で海運貨物のみを扱います。

通関業者やフォーワーダー、乙仲は異なった法律に則って業務を遂行

通関業者、フォーワーダー、乙仲の違いは、それぞれが遵守する法律が異なる点にあります。通関業者は「通関業法」、フォーワーダーは「貨物利用運送事業法」、乙仲は「港湾運送事業法」に従って業務を遂行します。

通関手続きの種類

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関の手続きには、輸入者本人が行う場合と通関業者に代行依頼する場合の2つのケースがあります。

輸入者本人が行う場合

通関手続きおよび国内の輸送を輸入者自身が行う場合として、以下のケースがあります。

  • 貨物の到着の連絡
    貨物が到着すると、船会社または航空会社より連絡があります。
  • 必要書類の準備
    輸入者は必要書類を準備します。主な必要書類には以下の書類があります。
    • インボイス(仕入書)
    • パッキングリスト(梱包明細書)
    • 船荷証券または運送状
    • 運賃明細書
    • 保険証券(保険をかけている場合)
    • その他税関から依頼のあった書類、および身分証明書、印鑑・社印を準備します。
  • 荷渡指示図(D/O)を入手
    船荷証券(B/L)を提出し、未払運賃等の支払いと引き換えに、船会社から荷渡指示図(D/O、Delivery Order)を受け取ります。
  • 輸入手続き
    税関に出向き、輸入通関手続きを行い、輸入(納税)申告書を提出します。申告に関する審査や検査および関税納付等を実施し、輸入許可書を受け取ります。
  • 貨物輸送の手配
    宅配便での輸送あるいは配送車等の手配を行います。
  • 貨物の引き取り
    輸入許可証およびD/Oを提出し保管料を支払うことで、倉庫からの貨物引き取りが可能となります。

通関業者に依頼する場合

通関手続きおよび国内輸送の手配を代行依頼するにあたって、輸入者は、委任状を提出し通関業者に依頼します。通関業者は、輸入品目に詳しい業者を探し、契約します。輸入者は船積書類(インボイス、運送書類、パッキングリスト等)を通関業者に提出し、通関後の貨物の配送等の段取りを指示します。

通関手続きの注意点

輸入する品目には、国内の法律による規制があることがあるので、事前に注意が必要です。一部の商品は、販売前に検査を受ける必要があったり、販売の免許や許可が必要な場合があります。

通関業務をスムーズに行うために、通関業者は輸出入・港湾関連情報処理システムを導入しています。通関手続きには専門的な知識と時間が必要であるため、通関業者に依頼することでトータルで考えるスムーズな通関手続きが期待できます。

通関業務の流れ

輸出通関業務、輸入通関業務それぞれを紹介しましょう。

輸出通関業務の流れ

輸出通関業務は以下の流れで行われます。

  1. 積載する船舶・航空機を手配
    荷主より依頼を受けると、輸送に利用する船舶、あるいは航空機を手配します。
  2. 保税地域に輸出貨物を搬入
    貨物を輸出する場合、保税地域で輸出許可を受ける必要があります。保税地域とは、「輸出入貨物を法の規制下に置くことにより、秩序ある貿易を維持し、関税などの徴収の確保を図るとともに、貿易の振興及び文化の交流などに役立てる」ための場所であると税関は定めています。
  3. 輸出申告書の作成
    荷主より預かった書類をもとに、貨物の状態等を確認し、「輸出申告書(E/D、Export Declaration)」を作成します。
  4. 税関に輸出申告
    貨物を搬入した保税地域を管轄する税関に輸出申請を行います。輸出申告書やインボイス、その他法令関係書類を提出します。
  5. 書類の審査や検査、輸出許可証の発行
    輸出申告書をもとに、税関は貨物を審査・検査し、問題がなければ輸出許可証が発行されます。
  6. 保税地域より貨物を搬出、船舶や航空機に積載
    通関が完了すると、保税地域より貨物を搬出し、手配した船舶あるいは航空機に移動させます。

輸入通関業務の流れ

輸入通関業務は次の流れで行われます。

  1. 貨物を保税地域へ搬入
    船舶や航空機で搬送された貨物は、保税地域に搬入されます。
  2. 税関に輸入申告
    必要書類を添付して、輸入(納税)申告書を税関に提出します。
  3. 税関にて審査・検査
    提出された輸入申告書を税関は審査・検査します。
  4. 税金(関税および消費税など)を納付後、輸入許可が交付
    輸入者は、関税および消費税を納付します。税関は確認の後、輸入許可通知書を交付します。
  5. 輸入許可が交付後、貨物は国内貨物として流通
    輸入許可を得ると、保税地域より貨物を引き取り、指定された流通手段で国内貨物として搬送します。

通関に必要な書類

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

輸出により貨物を取引先に輸送する場合、税関の許可が必要です。許可を得るためには書類の作成が欠かせません。主な書類として、以下のものがあります。

  • 仕入書(Invoice、インボイス、送り状)
  • 梱包明細書(Packing List、パッキングリスト)
  • 船積依頼書(Shipping Instruction、S/I、シッピングインストラクション)
  • 委任状

1.仕入書(Invoice、インボイス、送り状)

仕入書とは、インボイスと呼ばれ、輸出者が輸入者に対して貨物を送ることを知らせるために作成した書類です。記載内容は、貨物の品名・数量・価格・輸出者および輸入者の名称や住所・支払条件・出向予定日等です。通関業者はインボイスを基にして輸出通関手続きを行い、申告した輸出金額から関税等を納付します。インボイスは、輸出者が作成する場合と通関業者が作成する場合があります。

2.梱包明細書(Packing List、パッキングリスト)

梱包明細書とは、一般にパッキングリストと呼ばれ、インボイスを補完する書類です。パッキングリストは、貨物の詳細が記載されており、主に貨物の個数・重量・容積などが含まれます。ただし、価格や決済手段等に関する情報は含まれていません。

3.船積依頼書(Shipping Instruction、S/I、シッピングインストラクション)

船積依頼書とは、シッピングインストラクションと呼ばれ、いつどの船にどんな貨物を積むかに関する情報が記載された書類です。また、現場で積載業務に携わる作業員に対しての伝言事項も含まれます。船会社はシッピングインストラクションを基に船荷証券(B/L)を作成するため、注意して正確に作成する必要があります。

4.委任状

委任状とは、輸入者が初めて通関業者に取引を依頼する際に提出する書類です。通関業者は一定期間通関書類を保管する義務があるため、輸出者から依頼を受けた書類である委任状も保管されます。委任状の様式は特に定められておらず、任意の書式で作成します。

通関業務に関する法規制

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関業務は「通関法」に則って行われています。そのため、通関業者はさまざまな規則に従って業務を行っています。通関業者には、法律に基づいた義務や権利があります。

通関業者の義務

通関業者の主な義務として、次の3点があります。

  • 通関士の設置義務
  • 通関士の審査義務
  • 記帳や保存、届出、報告等に関する義務

1.通関士の設置義務

通関業者は、取り扱う貨物の数量や種類、通関書類の数等に応じて、必要な人数の通関士を各営業所に配置する必要があります。通関業者は、業務の効率化や通関士の経験や実績を勘案して、通関士を配置します。

2.通関士の審査義務

通関業者は、税関官署に提出する書類の中で、政令で定められた書類(例えば輸出申告書や輸入申告書等)に関して、通関士による審査と記名・押印が義務付けられています。

3.記帳や保存、届出、報告等に関する義務

通関業者は、記帳や保存、届出、報告などの義務も負っています。通関業者は、営業所ごとに帳簿を作成し、取り扱った業務の種類や件数、金額などを記載し、帳簿を3年間保存する必要があります。また、財務大臣に通関業務に携わる役員や営業所の責任者、通関士等を届け出る必要があります。通関業務に関する年度報告書も、4月1日から翌年3月31日までの期間について、財務大臣に提出する義務があります。

通関業者の義務として名義貸しの禁止や守秘義務、料金の提示、信用失墜行為の禁止等のその他の義務もあります。これらの義務を遵守することは適切な通関業務を提供し、信頼を維持するために不可欠です。

通関業者の権利

通関業者の権利として、増額更正に対し意見を言う権利、検査の立ち合いが出来る権利があります。

増額更正に対し意見を言う権利

通関業者が行った納税申告に対し、税関長から税額について増額更正の指摘を受けた場合、通関業者は意見を言う権利を有しています。通関業者にとっては、税額の増額は不利益になるだけでなく、今後の通関業務に関しても影響を及ぼす恐れがあるかもしれません。

そのため、通関法では、通関業者に意見を言う権利を与え、税関に対抗できるように定められています。

検査の立会いが出来る権利

税関長が通関業者に対し、日ごろの通関業務が適正に行われているのかを立ち入り検査する際、通関業者は立会いができる権利を有しています。立会いを行う場合、税関長に対して書面または口頭で申し出ることができます。

立ち入り検査の立会いをすることで、検査により指摘されるだけでなく、通関業者としての主張や見解を述べる権利を付与されているのです。

通関業務を効率化する方法

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関業務は煩雑で多くの工程から成り立っています。紙主体のアナログな業務であるため、データ入力にかなりの時間を要します。通関業務を効率化する方法はあるのでしょうか。

今までの通関業務

通関業務は紙を主体とするアナログな業務で、、荷主から提出される帳票関連の書類は通常FAXやPDFで送られてきます。これらの書類をExcelなどでデータ化するには時間がかかります。また、送られてきた帳票に目を通し、データ入力をしなければなりません。作業工程が多く、担当者によって作業効率にばらつきがあり、標準化されていない問題点があります。
結果として、帳票内容に関しては個人の経験やノウハウに依存し、業務が属人化する傾向があります。

AI-OCRを活用した帳票のデータ化

通関業務をデジタル化することにより、大幅な工程の削減が可能です。多種多様な帳票をAI-OCRにより自動データ化し、関税計算や申告書作成まで一貫したシステムが可能となります。手書き文字の認識率の高いAI-OCRを活用することで、文字間のばらつきやクセなどをAIが学習し、データ化が可能です。これにより、業務を標準化することができ、個人の経験やノウハウに依存していた業務属人化の問題が解消されます。

場所を選ばず作業が可能

デジタル化を進め、AI-OCRを活用することで、大量のデータ処理が可能になります。通常、勤務場所が制限される通関業務でも、リモートワークでの作業が可能になります。業務の効率化が進むことで、近年注目されている働き方改革にもつながるでしょう。

まとめ

通関業務とは?通関業者や関連事業者・通関業務について解説

通関業務は、輸出入事業者に代わって税関官署に対して行う代行業務であり、業務内容が多岐にわたるため、スムーズな通関業務を行うためには通関業者に依頼することが推奨されます。輸出業務や輸入業務は、税関による審査や検査をクリアする必要があり、書類の不備にも注意が必要です。
通関に必要な書類として、輸出業者は通関業者にインボイス、パッキングリスト、シッピングインストラクション、そしてはじめて利用する場合は委任状が必要です。通関業務は煩雑な業務であり、書類のやり取りによるデータ入力においても、経験年数やノウハウにより個人差が大きく、業務が属人化している状況が見られます。しかし、近年ではAI-OCRの導入により、データ入力が自動化され、関税の計算から申告書の作成まで一気に行えるようになり、作業効率の改善と業務の標準化が見込まれています。
通関業務はリモートでの作業に向いていない業務でしたが、AIの導入で業務にゆとりが生まれ、働き方改革にもつながるでしょう。