入力ミス対策 - 人間によるダブルチェックとITを活用したクロスチェック方法

入力ミス対策 - 人間によるダブルチェックとITを活用したクロスチェック方法

現代社会において、私たちは日々大量の情報を取り扱っています。
情報処理の過程で生じる入力ミスは避けられないものです。
入力ミスが起こると、情報の正確性や効率性が損なわれるだけでなく、大きな損失や深刻な事故につながる可能性もあります。
こうしたリスクを軽減するために、ダブルチェックやクロスチェックといった手法が用いられます。
本記事では、入力ミスを防ぐための「人間によるダブルチェック」と「ITを活用したクロスチェック」の方法について紹介します。

入力ミスによって起こりうるトラブル

注文書や請求書内容の誤り

営業事務でよくある入力ミスは注文書請求書の内容の誤りです。
品番、金額、日付、送り先の担当者氏名などを間違えることは、どんな企業でも起こりうることです。
特に請求金額の入力ミスは、相手方にとっても払い戻しや追加支払いなどの工数が生じるため、クレームなどにも繋がります。
また、注文書の品番を誤ると、返品作業や再発注作業が必要となるので追加の工数や時間がかかります。
返品不可商品の場合には、大量の不要在庫を抱えてしまいマイナスの影響を及ぼします。

入金ミス(誤振込など)

経理業務でよくある入力ミスは、振込先の口座番号や金額の入力ミスです。
これらの入金ミスの処理を誤ると大事に発展する可能性もあるので注意が必要です。
入金ミスについては、別記事にて原因や対策を詳しく解説しています。

入金ミス(誤振込など)が起こる原因と起こってしまった時の対処方法とは - Genial Technology

誤振込などの入金ミスをした時にどう対応すれば良いのでしょうか。本記事ではその原因と、起きたときの対処法や予防策について解説します。

入力ミス防止方法:人間によるチェック

入力ミスを防ぐためにはチェック作業は必要不可欠です。ここでは人間によるチェック作業にどのような方法があるのか解説していきます。

ダブルチェック

1回目で発覚しなかったミスを発見するために、2回確認を行う「ダブルチェック」をルーティーン化している企業も多いです。
ここではダブルチェックの種類についてご紹介します。

1人で行うダブルチェック

人手や時間の不足、人員にかけるコストがない場合によく用いられます。
ただし、複数人で行う方法と比べて精度は落ちてしまうため、複数人でダブルチェックを行う方が望ましいです。

  1. 1人連続型
    1人で2回チェックする方法です。
  2. 1人時間差型
    1人連続型と同様、1人でチェックする方法ですが、1回目と2回目の間に時間を空けてチェックを行います。
    時間を空けることで頭の中がリフレッシュされ、1回目では気づかなかったミスに気付ける可能性が高まります。
  3. 1人双方向型
    1回目と2回目で違う視点からチェックを行うことです。
    例えば、1回目は「AからB」の順番でチェックし、2回目は順番を逆にして「BからA」の順でチェックします。

1人で行うダブルチェックを精度が高い順番に並べると、①1人双方向型②1人時間差型③1人連続型となります。

2人で行うダブルチェック

  1. 2人連続型
    2人で同じ手順を連続して確認する方法です。もっとも一般的なダブルチェックの方法であり「見る人が変わるとミスが見つかる」と言われています。
  2. 2人双方向型
    1人目と2人目で違う視点から確認していく方法です。例えば、1人目は「AからB」の順番でチェックし、2人目は順番を逆にして「BからA」の順でチェックします。

2人で行うダブルチェックを精度が高い順番に並べると、①2人双方向型②2人連続型となります。

ダブルエントリー(二重入力)

たとえダブルチェックをしたとしても、目視だけではミスを見逃す可能性が否めません。
ダブルエントリー(二重入力)は、目視チェックに頼るのではなく、別の担当者が実際に入力をしてそのデータをお互い突き合せることで、正確性を高める方法です。
量が膨大だと入力に時間がかかってしまうので、ダブルエントリー(二重入力)が必要な業務を絞ることが大切です。

クロスチェック

確認や検証の精度や信頼性を高める手法の一つで、二つ以上の異なる方法や観点、資料などによりチェックを行う方法です。
例えば「1回目はA資料を使用して確認し、2回目はB資料を使用して確認する」や「1回目は人間が確認をし、2回目はITを使用して確認する。」のように、やり方や観点を変えて確認します。

人間によるチェックの有効性を高めるポイント

ルールの策定・徹底

ルールやマニュアルを作成することは、チェック項目を共有して正確性を高めるため大切です。
チェック方法が統一されていないと、チェックの精度に差が生じてしまいます。
また、チェックリストを導入することで、意識や集中力が高まります。

ミスの原因追究

ミスをした場合には、原因を分析することが大切です。
よくある原因として確認不足や注意力不足などがありますが、ミスが頻発する場合は、それ以外の原因(ミスしやすい業務フロー等)が潜んでいる可能性があります。
同じミスを繰り返さないために原因を細かく追究して対策を講じることが大切です。
ヒューマンエラーについては、別記事にて原因や対策を詳しく解説しています。

ヒューマンエラーとは-種類、原因、対策例について - Genial Technology

人間は完璧ではなく、確認をしても誤りや失敗は発生してしまうものです。この記事では、ヒューマンエラーの種類と原因について説明します。

入力ミス防止方法:ITを活用したクロスチェック

これまでは人間によるチェック方法をご紹介してきましたが、ここからはITを活用したクロスチェック方法をご紹介します。

Microsoft Excelの使用

人手不足などで入力データのダブルチェックが難しいなら、Excelの機能を活用してミスを防止しましょう。

入力規則

入力する文字の種類(半角/全角、整数、日付など)や入力する文字列の長さ上限が決められている場合は、「入力規則」機能を使えば、あらかじめ指定したルール以外の入力ができなくなります
また入力する項目文字列がある程度決まっている場合は、入力したい文字列をプルダウンメニューから選べるように設定することもできます。
ワンクリックで項目を入力できますし、決められた値を選んで入力するので入力ミスも起こりにくくなります。
選択肢が限られている項目の入力に最適です。

関数

日々の売上や経費、顧客情報など、「手入力」を必要とする場面は多々あります。Excel関数によりできるだけ自動化することで、データ入力の精度とスピードを大幅に改善できます。以下の2つ関数は入力ミスの削減に効果的です。この他にも転記や判断を自動化する様々なExcelの関数があるため、知っているのと知らないのとでは作業スピードと正確性に差が出てきます。

  1. VLOOKUP関数
    指定したデータに紐付くデータを、指定した範囲の指定した列から検索して表示します。
    例えば品番、商品名、単価の組み合わせが一定の場合、品番を入力するとそれに紐づく商品名と単価をそれぞれVLOOKUP関数で自動転記することが可能です。
    VLOOKUP関数は「=VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,[検索方法])」という書式で使用します。
  2. IFERROR関数
    「カッコ内の数式の結果がエラーの時に返す値を指定できる」関数です。
    =IFERROR(値,”エラーの場合に返す値”)」という書式で使用します。
    IFERROR関数はVLOOKUP関数と組み合わせて「=IFERROR(VLOOKUP(検索値,範囲,列番号,[検索方法]),” エラーの場合に返す値”)」という書式を使用すると、検索値が見つからなかった場合に#N/Aエラー以外の値を入力することができます。
  3. XLOOKUP関数
    VLOOKUP関数とIFERROR関数を組み合わせた機能を含む関数です。
    VLOOKUP関数では指定した範囲の左端の列が検索値と対応する必要がありますが、XLOOKUP関数は検索値と対応する列が左端でなくても自動転記することが可能です。
    XLOOKUP関数は「=XLOOKUP(検索値,検索範囲,戻り配列,[見つからない場合],[一致モード],[検索モード])」という書式で使用します。

マクロ

マクロとは、一連の操作を記録して必要に応じて呼び出して自動実行する機能を指します。
特にExcelの自動化で使われる例が多く、マクロを通じてデータ入力や集計、印刷などほぼすべての機能を自動実行可能です。
特に単純な作業を何度もくり返し行うシーンではマクロが活躍します。
マクロ」と「VBA」は混同され、同じような意味で使われることも多いですが、厳密には以下のような違いがあります。

  • マクロ
    Excelや他のアプリケーションを決まった順序で制御する機能
  • VBA(Visual Basic for Applications)
    Microsoft Officeにおいてマクロ機能で作成する順序を記述するときに使うプログラミング言語

VBAは、マクロ機能で使われているプログラミング言語なので、機能そのものを指す言葉ではありません。
VBAを習得することで、マクロを使ってより複雑な処理が行えるようになりますが、「マクロの記録」機能を使えばVBAの知識がない方でもマクロを扱えます。
Microsoftが認定するMicrosoft Office Specialistでは上級に分類されている使用方法ですので、マクロを使ったチェック業務を行いたい場合には専門知識が必要となります。
なお、Web版のMicrosoft OfficeではVBAに代わってOfficeスクリプトというプログラミング言語が利用されています。

AIツール導入

入力ミスを防ぎ正確性を重視したい場合には、AIツール導入の検討をおすすめします。
AIとは「人工知能(Artificial Intelligence)」の略で、AIを活用することで機械が人間のように仕事をし、業務の大幅な効率化が図れます。
AIには自己学習する機能も搭載されているため、ミスが起こってもそこから学び、作業の精度が向上していきます。
人間の作業に頼っていた煩雑な業務もAIが処理すれば人間よりも速いスピードで処理できるため、正確性だけでなく生産性アップも期待できます。

まとめ

入力ミスは、発注書や請求書などの重要書類の誤りや入金ミスなど、様々なトラブルを引き起こす可能性があります。
これを防ぐためには、人間によるチェックとITを活用したクロスチェックがあります。
人間によるチェックとして、1人や2人で行うダブルチェックやダブルエントリー、クロスチェックがあります。
ITを活用したクロスチェックには、Excelを使用した方法(入力規則、関数、マクロ)とAIツールの導入があげられます。
コストを抑えて正確に情報を処理するためには、人間とITを組み合わせる対策が有効です。