コンプライアンス違反とは-後編:原因、防止策、対応方法について

コンプライアンス違反とは-種類、事例、防止策について(後編)

企業や組織が遵守すべき法律や規制に違反した場合、それを「コンプライアンス違反」と呼びます。コンプライアンス違反は、企業に多大なダメージを与え、最悪の場合、倒産に追い込まれる危険性さえあります。本記事では、コンプライアンス違反が起こる原因と対策、そして実際にコンプライアンス違反が発生してしまった場合の対応方法を解説します。
前編ではコンプライアンス違反の基礎となる定義や違反事例、企業への影響について解説しています。

コンプライアンス違反とは-前編:種類、事例について

企業や組織が遵守すべき法律や規制に違反した場合、それを「コンプライアンス違反」と呼びます。コンプライアンス違反は、企業に多大なダメージを与え、最悪の場合、倒産…

コンプライアンス違反の原因

コンプライアンス違反が起こる主な4つの原因を説明します。

原因1: 不正のトライアングル理論

米国の組織犯罪研究者ドナルド・R・クレッシーが提唱した理論をもとにW・スティーブ・アルブレヒトが体系化した「不正のトライアングル理論」が最も有名です。組織内で従業員が不正行為に至るメカニズムを分析した理論で、3つの重要な要因が揃ったときに不正を働くとされています。

不正のトライアングル理論
不正のトライアングル理論

動機

動機とは、本人がなぜ不正を働こうと思うのかという誘因や必要性を表し、以下のようなことを指します。

  • 金銭的な問題、欲求を抱えている
  • 過剰なノルマを与えられている
  • 業務上のミスの隠蔽

機会

機会とは、内部統制や監視が機能していなかったり、内部統制や監視を無視できる立場であったりすることで、以下のような不正の実行が可能な状況にあることを指します。

  • 内部統制が機能していない(例えば経費申請などが十分に精査されないまま承認されている。)
  • 業務が属人化しており、他の社員が業務を把握していない

正当化

正当化とは 、倫理感の欠如や、行動が適切であると正当化する姿勢など、不正への抵抗が低い心理状態であることを指します。例として、以下のような正当化が考えられます。

  • やらなければ会社が倒産してしまう
  • 借りるだけであって、いずれ返すため大丈夫
  • 他にも同じことをしている人がいるから大丈夫

これらの3つの要因が揃わないようにするという観点で対策を立てる必要があります。

原因2: 知識不足

コンプライアンスに関する知識がないため、無意識に違反してしまうということがあります。労働基準法や育児・介護休業法、高齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、最低賃金法など、経営にはさまざまな法律が関わっています。日々情報にキャッチアップし、最新の法令に準拠した経営を行わなければなりません。
企業の上層部や管理職がコンプライアンスに関する正しい知識を身につけていなければ、従業員への浸透も難しくなります。また、従業員に適切な知識がなく、さらにチェック体制も整っていないことが重なった結果、コンプライアンス違反が起こる場合があります。

原因3: 組織風土に問題がある

コンプライアンス違反と分かりながらも組織として見逃したり、目をつぶったりする場合があります。経営陣が日頃からコンプライアンスを軽視する態度を見せていたり、自由に意見を言えない職場において、従業員が違反だと知っていながらも不正会計などを行なってしまうケースです。例として、以下のような特徴が挙げられます。

  • 経営陣の価値観が現場に伝わっていない
  • 上長命令が誤っていてもそのまま実行される
  • 閉鎖的で風通しが悪い
  • 従業員間の信頼関係がない
  • 部門間や個人間での情報共有の機会が少ない

原因4: 違反を防ぐ仕組みがない

社内で不正を働く人に気付いたとしても、誰に報告していいのかわからなかったり、そもそも全従業員が簡単に企業の機密情報にアクセス出来てしまったりするような環境では、コンプライアンス違反を防ぐことは困難です。
社内に相談窓口を作ったり、情報セキュリティ対策を実施したりするなど、コンプライアンス違反を防ぐシステムおよび管理体制の構築が重要です。

コンプライアンス違反の防止策

コンプライアンスに違反しないためには、事前の対策が不可欠です。コンプライアンスを遵守する上で効果的な対策方法を4つ解説します。

対策1: 規定・方針の策定

経営陣が口頭でコンプライアンス遵守を呼びかけても、従業員は気に留めない可能性があります。したがって、具体的に従業員が守るべきルールを明確化することが重要です。一般的には、以下の流れでコンプライアンスに関する規定・方針を策定します。

  • 社内リスクを洗い出す
  • リスクが顕在化した場合の対策や罰則などの明確化
  • 従業員が守るべきルールの文書化

ルールを明確化することで、従業員に対して「このような状況下ならば、どのように行動すべきか」ということを認識させることができます。規定を策定後、内容を従業員に対してわかりやすい方法で周知徹底する必要があります。

対策2: 社内のチェック・監視体制を強化する

社内のチェック・監視体制がきちんとしていれば、コンプライアンス違反が発生するリスクを最小化できます。
現場担当者によるチェックに加えて、法務・経理などのバックオフィスにおけるチェック体制も確立することが必要です。

チェック作業を自動化するジーニアルAIについて

ジーニアルAIは、証憑書類を始めとするあらゆる書類の照合・突合作業の自動化を可能にします。経理やバックオフィスでアナログで行われている確認作業においてご活用頂くのが最適です。

  • 会計監査にかかる時間の半分を占める「証憑突合」を自動化するプロダクトとしてのノウハウを活用しており、四大監査法人(Big4)のうち1社との実証実験では、約94%の精度を確認
  • 必要なデータを様々なフォーマットの書類から抽出
  • AIを活用して照合・確認作業を自動化
  • ライセンス数をもとにしたサブスクリプションモデルにより、
    月額2.5万円〜とリーズナブルな価格で導入可能

経理やバックオフィスでの細かいチェック作業を自動化し、ヒューマンエラーを防ぎ、業務を効率化することが可能です。お気軽にお問い合わせください。

ジーニアルAIの詳細はこちら

ジーニアルAIの画面イメージ

対策3: 社内研修の実施

従業員に対してコンプライアンスに関する研修を実施すると対策の効果が高まります。コンプライアンス遵守に必要な基本的な法律知識や過去の事例などを伝えます。
社内研修を実施することで当事者意識を植え付ける効果が期待できます。また、実際の業務に当てはめることで「なぜコンプライアンス違反がダメなのか」を納得させる効果も期待できます。
従業員のコンプライアンス遵守の意識が薄れないように定期的に社内研修を実施したり、最新情報を把握できるような仕組みづくりをすることがポイントです。

対策4: 内部告発・相談窓口の設定

社内で問題行為を告発・相談できる窓口を設置することも効果的です。コンプライアンス違反を発見しても、気が引けてしまい報告や相談ができない人も存在します。
被害者や告発者が気軽に相談できるような仕組み・雰囲気を作ることが重要です。また、被害者や告発者への報復活動を防ぐために、相談した事実が第三者に漏えいしないようにするこことも大切です。

コンプライアンス違反が発覚した場合の対応

どれだけ対策をしていてもコンプライアンス違反が起きることはあります。ここでは、その場合の対応方法を5つ説明します。

対応1: 発生原因や被害状況の確認

従業員がコンプライアンス違反をした場合には、その発生原因や動機、被害状況を迅速に特定しなければなりません。
発生原因等を特定するためには、社内における相談窓口や、内部委員会の設置など、事前にコンプライアンス専門部署を検討しておく必要があります。
事前対策の強化で「このコンプライアンス違反が起きたらこう動く」など取り決めておき、迅速に動けるように体制を整えておくことが有効です。

対応2: 弁護士へ相談

従業員によるコンプライアンス違反が発生したら、今後どのような対応をすれば良いのか事前に弁護士に確認してく事が大切です。場合によっては、顧客への謝罪、示談や裁判の準備、関係者や報道などへの報告などを行わなくてはなりません。
当該従業員の法的対応の有無や、処分内容についても法的にどのような対応ができるのか確認する必要があります。

対応3: 当事者・関係者の処分を検討

コンプライアンス違反をした従業員に対しては、その被害の程度や状況、社内規定や方針により、法的な対応や然るべき処分を決定しなければなりません。
企業法務に詳しい弁護士と相談の上、当事者やその関係者の処分を行うようにします。

対応4: メディア等へ報告

今後の企業透明性を確保するためにも、きちんと公表・報告するという対応も考えられます。社会的な信用の失墜を懸念するかと思いますが、後から知られた場合の方が多くの社会的信用を失います。
外部だけでなく内部従業員に対しても、会社としてどのような対応を取るのかを明確にする必要があります。会社の対応が後手に回ってしまうと、従業員からの信頼も失墜しかねません。

対応5: 再発防止策を策定

規定・方針でルール内容を再確認し、再発防止策を追加します。また、会社全体でのコンプライアンス教育を見直す必要があります。

まとめ

企業や組織が遵守すべき法律や規制に違反した場合、それを「コンプライアンス違反」と呼びます。コンプライアンス違反は企業にとって重大な問題であり、法律や規制に適合するためのプロセスを確立し、従業員に対して適切な教育を行い、適切な監査システムを導入することが重要です。また、発覚した場合は適切な対応を行い、信用回復に向けた取り組みを行うことが求められます。

参考文献
HR Lab.:https://i-myrefer.jp/media/lab/refer/compliance/