ヒューマンエラーとは何か-後編:対策例について

ヒューマンエラーとは、人間が原因となって生じた誤り(ミス)のことを言います。先入観、思い込み、見落としなどが要因となる場合もあり、引き起こした人は故意にミスを起こすつもりはありません。ミスが発生しやすい状況を放置すると、大きなトラブルや事故に繋がる恐れがあります。これを回避するには、ミスが生じる原因を解明して対策する必要があります。この記事では、ヒューマンエラーの対策手順や対策例について解説します。
本コラムは前編・後編の2部編成となっており、前編ではヒューマンエラーの基礎となる種類や原因について解説しています。
ヒューマンエラーを防ぐための対策の検討手順
手順1:過去と現在のヒューマンエラーをリスト化する
小さいヒューマンエラーも含めてリスト化して対策を検討する基礎とします。エラーの多くは現場で起こっているため、管理側だけでリスト化しようとせずに現場側でもしっかりと洗い出すことが重要です。
手順2:既に安全対策が取られているヒューマンエラーを外す
できるだけ多くのヒューマンエラーを把握したら、対策が打たれているのかどうか調査し、対策済の項目をリストから外します。
手順3:残ったヒューマンエラーの原因を考える
前編であげた原因のうち、どれが要因となったヒューマンエラーなのか考えます。
手順4:ヒューマンエラーへの対策を検討する
原因へ対処する方法を列挙します。実現可能かどうかは考えずに、できる限りたくさん候補をあげるようにします。
手順5:実施する対策を絞り込む
全ての対策を実施するのは現実的ではありませんので、想定される効果とコスト(予算・手間・時間)に合わせて実施すべき対策を絞り込みます。
ヒューマンエラーを防ぐための対策の例
ヒューマンエラーは不幸な要因の組み合わせによって発生します。いくらセキュリティ面を強化してもシステム運用を標準化しても、業務を行うのが人間である以上、「ミス」をゼロにすることは不可能です。
ここに挙げる対策はほんの一例です。企業ごとのコスト・規模・環境に適した対策を講じることが推奨されます。
デジタルツールや機械の導入
ヒューマンエラーが起こりがちな業務に対しては、RPA(Robotic Process Automation)を代表とする、デジタルツールや機械などの導入が効果的です。業務をデジタルツールや機械に任せて自動化することで、ヒューマンエラーを削減できます。また、定型業務を機械化することで慣れや疲れなどを原因とするヒューマンエラーを防止できます。
すべての⼈的作業を削減するのは難しいですが、⼯数削減や作業⽅法の⾒直しをによる業務効率化が図れ、⼈件費の削減や他の重要な業務へのリソース配分が可能になります。
確認作業を自動化するツールの活用
確認作業を自動化するツールを活用することで、ミスの早期発見を行うことが可能です。
ジーニアルAIは、証憑書類を始めとするあらゆる書類の照合・突合作業の自動化を可能にします。経理やバックオフィスでアナログで行われている確認作業においてご活用頂くのが最適です。
- 会計監査にかかる時間の半分を占める「証憑突合」を自動化するプロダクトとしてのノウハウを活用しており、四大監査法人(Big4)のうち1社との実証実験では、約94%の精度を確認
- 必要なデータを様々なフォーマットの書類から抽出
- AIを活用して照合・確認作業を自動化
- ライセンス数をもとにしたサブスクリプションモデルにより、
月額2.5万円〜とリーズナブルな価格で導入可能
経理やバックオフィスでの細かいチェック作業を自動化し、ヒューマンエラーを防ぎ、業務を効率化することが可能です。お気軽にお問い合わせください。
確認体制の構築・強化
相互チェックなど確認体制を構築したり強化したりします。自分のミスには気付きにくいものですが、他人のミスは客観的に探せるものです。ただし新入社員が上司のミスを発見したとき、組織風土によっては委縮して伝えられない可能性があります。このため、担当者の組み合わせに注意する必要があります。
ルールや手順の単純化
5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が行き届いている環境では、効率だけでなく生産性も上がり、ヒューマンエラーが起きにくいとされています。
ここでの整理整頓の対象は、工具や書類などの物理的なものだけでなく、パソコンやファイルサーバーのフォルダなども含みます。必要なものがアクセスしやすい場所にあるだけで、取り間違いや添付ミスといったヒューマンエラーを防げるようになります。
フールプルーフ
フールプルーフとは、「間違った操作が出来ないような設計」のことです。
具体例として、下記が挙げられます。
- 間違った内容を入力するとアラートが表示されて入力を確定させない
- 2人同時にログインできない
- 複数人に同じ内容を入力させ、入力結果が異なると入力を確定させない
適度な休憩
長時間労働による集中力の低下は、ヒューマンエラーを引き起こします。諸説ありますが、大人の集中力が持続する時間は平均45分、最長でも90分程度と言われており、長時間作業をしていると次第に効率が落ちてしまいます。適度に休息を取らないと、効率的に仕事を進めることができません。
スイスチーズモデル
スイスチーズモデルとは、視点の異なるリスク対策を何重にも組み合わせることで、リスクを軽減できるという考え方のことです。スイスチーズモデルを提唱したジェームズ・リーズンは、トラブルや事故のモデルをチーズの穴に例えて可視化しました。

ヒューマンエラーが想定される業務には、いくつかの安全対策が設けられていることが多いです。それは物理的な対策、予防方法の浸透、技術的な対策、組織的な取り組みなど様々です。それらの安全対策を重複することによって事故を防止して、安全を維持しようとする考え方です。
しかし、ヒューマンエラーが安全対策の脆弱な部分や連鎖的なエラーの隙間を通過していったときにトラブルや事故として現れます。
そのため、多くのケースでは、1つの安全対策のみではヒューマンエラーによるトラブルや事故を充分に防ぐことは出来ません。上述の安全策を組み合わせることによりトラブルや事故のリスクを軽減させることができると言えます。
まとめ
ヒューマンエラーとは人為的ミスのことです。状況により、軽微なトラブルや事故で済むこともあれば、重大なトラブルや事故が発生することもあるため、注意や対策が必要です。ヒューマンエラーは、人が業務にあたる以上は決して避けられないものです。失くすことはできなくても、今回あげた防止策によってトラブルや事故として顕在化するリスクを低減することができます。
前編を読んでヒューマンエラーの一般的な原因を把握したうえで、個々のケースについて適切な防止策を考え、導入することが重要です。防止策はただヒューマンエラーを防ぐだけでなく、業務の効率化や品質や成果の均一化など、業務上で多くのメリットが得られるものもあります。自社に合った防止策を活用しましょう。
参考文献
・SmartDB:https://hibiki.dreamarts.co.jp/smartdb/learning/le-sp20220527/
・日本の人事部:https://jinjibu.jp/keyword/detl/1379/