スキャンデータとは-電子化のやり方、目的、メリット、デメリットについて

スキャンデータとは-電子化のやり方、目的、メリット、デメリットについて

IT技術の進歩により、これまで紙で作成・保管されていた契約書や申請書などの書類が電子化されるようになってきました。
紙媒体の書類を電子化するためには、記載された文字や画像をスキャンしてデータ化する必要があります。

今回の記事では、スキャンデータを作成するために必要な手順やポイントについて解説します。
ペーパーレスを実現することで、業務の効率化やコスト削減が可能になります。
紙媒体の管理にお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。

スキャンとは

スキャンとは、書類に記載されている文字や画像を読み取り、データ化することをいいます。
スキャナーとよばれる読み込み用の機械を使用し、書類を撮影することで文字や画像がデータとして生成されます。
生成されるデータは、PDFやJPEGといった形式で保存され、編集や加工が可能となります。

スキャンデータの電子化ルール

実際にスキャンデータを電子化するにあたって、どのような準備が必要なのでしょうか。
重要書類については、過去数年から数十年にわたって大量に資料が保管されていることが考えられます。
それらの資料を電子化するには、相当な労力が必要となるため、あらかじめルールや計画を立てることが重要です。

定めるルールとしては、以下のようなことが挙げられます。

1.電子化する書類の選別

重要書類は保管期限が定められています。
先にも述べたように、全ての資料を電子化することは作業負荷が大きいため、保管期限が長いものから優先的に電子化をおこなうとよいでしょう。

2.電子化するデータの保管場所の選定

せっかく電子化をしても適切に保管がなされていなければ意味がありません。
どのデータをどのフォルダに格納するのか、何のデータであるかをどう示すかなどを客観的にわかりやすい運用ルールで定めることが必要です。

3.電子化するデータの解像度の統一

後述しますが、電子化するデータの解像度を統一することも大切です。
データごとに解像度が異なると扱いにくくなるため、統一するようにしましょう。

適切な解像度とは

先に述べたように電子化をする際には、解像度を定めることが重要です。
適切な解像度はどの程度にすべきなのでしょうか。

解像度とは、画素(ピクセル)の密度のことであり、画素の密度が高いほどきめ細かい画像になります。
データが鮮明であることに越したことはありませんが、解像度を高めるほどスキャンに時間を要したり、データ量が大きくなってしまったりする弊害が生じます。
そのため、解像度は高ければいいというわけではなく、書類に記載されている画像を元のサイズのままでスキャンする場合は、一般的に300dpiくらいが好ましいといわれています。

dpiとは解像度の単位で、1インチ(2.54cm)に何個の画素が並ぶかをあらわします。ただし、書類を引き延ばす場合は、解像度を上げる必要があるため、倍率に応じて600dpi以上を検討します。

スキャンデータの電子化方法

ルールを決めた後は実際の作業に移行します。書類をスキャンする方法は、以下のようになります。

1.コピー機や複合機を使う

コピー機や複合機にはスキャナーの機能が設けられています。
スキャンデータを電子化するための最もポピュラーな方法となっています。

2.スマートフォンやタブレット端末で撮影した画像をデータ化する

最近のスマートフォンやタブレット端末には、スキャン機能を有しているものがあります。
カメラ機能を使って、スキャンしたいデータを撮影するだけで、簡単に処理が可能です。

3.外部委託をする

外部のサービスを利用する方法もあります。
大量の文書を電子化したい場合は、時間もコストもかかるため、業者へ依頼することを選択肢のひとつとして検討できます。

スキャンデータの電子化の目的

そもそも電子化をする目的は何なのでしょうか。
スキャンデータの電子化を進めるための理由には、以下の3点が挙げられます。

1.ペーパーレス化の推進

テレワークの普及に伴い、国や企業ではペーパーレス化の取り組みが積極的に進められています。
認印の廃止のような脱ハンコの流れなどもその一環として発生しています。

2.e-文書法

e-文書法とは、法令により義務付けられている書面の保存について、原則的に電磁的記録による保存を認めた法律です。医療、保険、証券、建築などの分野において、法令に保存義務が定められた文書が対象となります。
この法律は、書面保存による負担をなくし、利便性向上を図ることを目的としています。

3.電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、e-文書法と同様に、文書の電子保存に関するルールを定めた法律です。会計帳簿や証憑などの国税に関係する文書が対象となります。
対象となる文書に違いがありますが、e-文書法と電子帳簿保存法の目的は同じです。

スキャンデータの電子化のメリットとデメリット

電子化を進めることで、どのような効果や影響が見込まれるのでしょうか。
メリットとデメリットをそれぞれ解説します。

メリット

1.印刷費の削減

紙の印刷をする必要がなくなるため、印刷代の削減ができます。

2.管理費の削減

印刷が不要になるため、書面の管理負担が軽減されます。
書面を保管する場所の確保や整理に伴う人的コスト等、様々な面での経費削減が期待できます。

3.検索時間の削減

データで管理することで検索時間の削減に繋がります。
書面で管理をしている場合は、倉庫や段ボールの中に求めている書類が埋もれてしまい、探すのに相当な労力を要することが考えられます。

その点、データで管理していれば検索が容易になるため、時間を削減できます。

4.紛失リスクの回避

書類を紙で管理をする場合、紛失のリスクや誤って破損したり、汚損したりするリスクがあります。
データで管理すれば、このようなリスクはなく、ファイルを誤って消してしまった場合でもバックアップしておけば復元が可能です。

5.経年劣化の防止

書面による長期保管には、風化の恐れがあります。
しかし、データで管理をすれば、そのようなリスクはなく、永久保管が可能です。

6.環境への配慮

紙の使用量を減らすことは、環境への配慮にも繋がります。
昨今では、SDGsなど環境への取り組み姿勢が企業評価に直結する時代となっています。
電子化はコスト面だけでなく、企業ブランドの向上にも役立つことがあります。

デメリット

1.ストレージの確保

倉庫や書庫など、目に見える保管場所を減らすことができますが、データを管理するためにはストレージの確保が必要になります。
また、データ量によっては相応の管理コストが発生することがありますので、それを理解しておくことが重要です。

2.情報漏洩

ウイルスなどによるデータの漏洩にも気を付けなければいけません。
外部からのセキュリティ対策はもちろん必要ですが、同時に内部ユーザーの不正利用等への対策も必須です。

スキャンデータの電子化の今後の展望

紙媒体を電子化することは、今後ますます普及していくものと考えられます。
このような変化に伴い、今後はどのように管理運用されていくのか、その展望を解説します。

OCR技術の進歩

OCRとは、スキャナーやスマートフォンで手書きや印字された文字を読み取った画像データをテキストデータに変換する技術です。
これまでは、文書をスキャナー等で読み取っても、あくまでも画像データとして保存されるだけでした。
しかし、OCR技術を用いて文字をテキストデータ化することで、より効率的にデータを保管することができます。

AIによる文書管理の自動化

AIは自然言語処理に優れているため、テキストマイニングをすることが可能です。
テキストマイニングにより、文書の中身を分析することで、データを効率的に検索し、またデータの種別により自動的にグルーピングすることができます。これにより、管理運用面での最適化を図ることができると考えられます。

クラウド環境における文書管理の可能性

最近では、自社サーバーを設けずにクラウド上でデータを管理する手法が普及しています。
文書管理の観点においても、クラウド環境を活用することによるメリットがあります。
クラウド上で管理することで、場所を選ばずにアクセスが可能になり、情報の確認や共有をスピーディーにおこなうことが可能です。
また、データの保存領域を気にする必要もなく、維持管理に伴う費用も少なく済みます。

そのため、クラウド環境での文書管理は今後さらに普及していくでしょう。
一方で、クラウド上で管理する際に注意すべき点もあります。
重要書類の情報漏洩を防ぐために、セキュリティ対策を万全にしなければなりません。
したがって、セキュリティ対策を済ませた上で利用をしましょう。