AI監査への変革 - 監査におけるAIの活用とその未来

AI監査と聞いて、あなたは何を想像しますか?工場の現場をロボットが走って生産上の問題を発見して解決してくれたり、バーチャルアシスタントが表計算ソフトを確認しながら経理処理をアドバイスしてくれたり...どちらも便利かもしれませんが、AI監査と呼べるのでしょうか?
本記事では、AI監査とは何か、そしてそれが監査業界にどのような影響を及ぼし得るのか、考察したいと思います。
なお、同テーマに関するより詳細な情報については、PwCあらた有限責任監査法人のAI監査研究所とジーニアルテクノロジーによるレポートにてご覧いただけます。
AI監査とは
"AI"と"監査"には様々な定義がありますが、今回は、人間の判断を技術で代替・補助するソフトウェアを"AI"、企業情報を保証してビジネスリスクを低減するビジネスプロセスを"監査"と定義します。
これらの定義に基づくと、AI監査は、ソフトウェア技術を利用して、必要な判断を代替・補助し、会計情報を検証します。例えば、企業や組織が保有するデータを分析し、AIを活用することで、監査対象となる会計や財務情報から異常や不正を検出します。また大量のデータを迅速かつ精度の高い方法で処理することができるため、業務効率化も可能となります。更に人間の監査担当者が行う作業を補助することで、ミスを防ぎ、監査の質を向上させることが期待されています。
このようなAI監査は、機械学習や自然言語処理などのソフトウェア技術の発展に伴い、更に現実味を帯びてきました。
監査業界の現状
近年、監査法人の果たす役割の重要性は高まっています。実際、東証1部上場は2021年末に2,200社弱と、2011年からの10年間で3割増えており、上場企業は増加しています。更に、環境関連の開示など非財務情報にも監査業務のカバー範囲が広がっており、コンプライアンス遵守や情報開示の透明性が強く求められています。
一方で、会計士合格者数の増加による人材供給が追いついておらず、監査現場が十分に機能できていないという問題が深刻化しています。働き方改革やワークライフバランスの改善を求める声が強くなっている中で、十分な人員と監査時間を確保できていません。依然として増大する監査手続により長時間労働が続いており、離職率は一般の事業会社より高いとされています。また紙ベースの資料に基づく手作業のチェック業務を行うことも多く、エラー及び不正の見逃しに繋がりかねない状況です。
これらを受け、社会からの期待と長時間労働の抑止とのバランスをとることが、安定した高品質の監査業務を提供するために重要だと監査業界では認識されており、効率化を図るための莫大なシステム投資がなされています。そのシステム投資の中でも、AI監査が注目を浴びているのです。
AI監査に向けた業界内の動き
実際、監査専門家の間では、「AI監査はすでに始まっている」という見方が一般的になっています。IIA(内部監査人協会)が発行する「Internal Auditor Magazine」では、2017年12月号で「AIがやってきた」と特集されています。銀行の不正検知など、まだ実例は少ないですが、今後数年のうちにかなりのスピードでAIの監査への適用が進むと予想されます。
また、国際監査基準(ISA)を発行する規制機関であるIAASBも、AI監査に向けて動き出しています。IAASBのデータ分析ワーキンググループは、ディスカッションペーパー「Exploring the Growing Use of Technology in the Audit, with a Focus on Data Analytics(データ分析に焦点を当てた、監査におけるテクノロジーの利用の拡大の探索)」を発表し、各団体からの提案を募集しており、実際に各国の会計士協会や会計事務所が回答しています。現行の監査基準では、データ分析ツールの利用は、不正リスクに対する仕訳データ分析などのケースに限定されていると推測されます。しかし、2016年9月に発行された出版物では、データと裏付け文書の照合にこのようなツールを使用することができると言及しています。規制機関はすでにAI監査について徐々に、しかし着実に議論を始めています。
AI監査のアプローチの種類と事例
監査においてAIを活用するアプローチとして、(1)データ分析と(2)RPA(Robotic Process Automation)という2種類のアプローチが考えられます。
データ分析のアプローチ
データ分析のアプローチでは、会計システムに蓄積された有意なデータをAIが分析します。AIは、システム内の構造化されたデータベースからパターンを見つけ出し、パターンからの乖離を示すシグナルを監査人に追跡調査させる。これにより、監査人は膨大なデータベースの中から、砂漠の中で1本の針を探すような難易度の高いものでも、不正や誤りを発見することができるようになります。
データ分析のアプローチによって、以下のようなことが可能になると考えられます。
- 不正や不適切な処理をする可能性があるデータを発見する
- 将来的に起きる可能性のある問題を予測する
- データ分析を活用することで、リスクを把握して効率的なリスクマネジメントを行う
RPAのアプローチ
RPAはチェック作業の自動化のアプローチを取ります。AIが不正やミスの兆候を発見しても、それが本当かどうかは、請求書や契約書などの根拠となる書類を確認しない限りわかりません。そこでRPAでは、大量の取引と根拠となる書類を簡単なルールで照合します。そのルールにAIを適用し、AIに例外的な判断方法を教えることで、何度も繰り返し行ううちにより複雑な判断ができるようになります。
RPAのアプローチによって、以下のようなことが可能になると考えられます。
- 複雑な手順を自動化することで、効率的な監査を行う
- 手作業によるエラーを減らすし、より正確な監査結果を得る
- 大量のデータを効率的に処理し、データを活用した監査を行う
- 監査作業を効率的に行うことができるので、監査時間を短縮する
このような2つのアプローチでAI監査を導入・適用することで、監査人は戦略的な意思決定やステークホルダーとのコミュニケーションなど、より本質的で価値の高い業務に集中することができるのです。
証憑突合を効率化するジーニアルAI
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結局のところ、監査業務のソフトウェア部分は、異なるAIによって行われることになるでしょう。監査人が監査AIを所有し、被監査企業は会計AIを所有し、監査AIは会計AIと通信し、会計AIによる会計記録を検証することになります。そして、人間の監査人が監査AIの報告書を確認し、監査AIをチューニングして再度実行する。最後に、人間の監査人がその結果を会社の経営陣と議論する。そんな世界はそう遠くはないかもしれません。
主観的な判断が必要なグレーゾーンについては、依然として人間の判断が必要になりますが、ほとんどの監査リスクは、正確で完全なテスト結果によって対応できます。AIは白黒はっきりとした領域において、取引を100%検証することを可能にします。
ジーニアル・テクノロジーでは、データ解析とRPAの両方からアプローチする独自のプラットフォーム「ジーニアルAI」の構築を目指し、AI監査への変革を推進しています。
AI監査にご興味のある方は、info@genialtech.ioまでお気軽にお問い合わせください。